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キュービクル式高圧受電設備は、発電所から高圧で受電した電気を低圧に変換する変圧器を内蔵したもので、変電設備としてよく利用されています。キュービクル式高圧受電設備の内部にはトランスやコンデンサ等の変圧機器を設置し、変電を行っています。
発電所から送られてくる6,600Vの電気をキュービクル式高圧受電設備が家庭用の100Vや200Vに変換することで、電気を日常的に使えるようになっています。主に商業施設や工場、学校やオフィスなど変圧が必要な施設に設置されています。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、油状の化学物質群として人工的に作られたものです。電気を通しにくく、不燃性や耐熱性などの性質に優れていたことから、かつて電気機器の絶縁油などに広く使われていました。ただし、環境中で分解されにくく、生物の体内に蓄積してしまいやすい面があり、健康被害や環境汚染のリスクが指摘されています。
日本では1968年に食用油製造工程へのPCB混入事故(カネミ油症事件)が社会問題となり、これをきっかけに毒性や生物蓄積性が周知されました。1972年以降、国内での製造や輸入は行政指導によって中止され、その後法律も整備されて現在では製造・新規使用ともに禁止されています。しかし、使用当時につくられた電気機器の中には、PCBを含むものが長期にわたって保管されたり、使用停止後も放置されたりしており、それらが未だに残っている可能性があります。
1954年から1972年頃に製造されたトランスやコンデンサーには高濃度のPCBが使われていた可能性が高く、1972年以降〜1990年前後に製造されたものでも、製造工程や保守作業で微量のPCBが混入している場合があります。PCBは経年劣化した古い機器の中に残っていることが多く、漏洩事故が起これば環境だけでなく、作業する人の健康にも悪影響を与えるおそれがあります。
また、一見PCB不使用とされている機器でも、補充や交換を繰り返すうちに油が他の機器由来のPCBで汚染されていることがあります。特に1970年代以前の製品は注意が必要で、銘板から製造年を確認して疑いがある場合は、現場の専門家を通じた詳しい調査や分析を検討すると安心です。
最初の手順としては、所有する機器の製造年式とメーカー情報を確認することが大切です。PCBが重点的に使われていたのは1954年〜1972年頃の製品ですが、その後の1970年代後半から1990年代前半にかけても、意図せず微量のPCBが混入した例があります。
日本電機工業会(JEMA)や各メーカーが公開しているリストや検索システムを利用すると、高濃度PCBを使用していた機器の型式やシリアルナンバーをある程度しぼり込むことができます。ただし、低濃度PCBについてはリストだけでは判断しきれない場合もあるため、製造年を含めて総合的に確認する姿勢が重要です。
機器には通常、銘板と呼ばれるプレートが取り付けられており、メーカー名・型式・製造番号・製造年月などが記載されています。こうした情報をもとにメーカーに問い合わせたり、公式に公開されている型式・製造番号リストと照合することで、PCB含有機器かどうかの判別に役立ちます。
ただし、銘板の表示は製造時点の情報なので、その後の保守作業で別の油が混入した場合などは現状と異なることがあります。また、キュービクル内部の電気機器には高電圧がかかっているため、素人が直接触れるのは大変危険です。現地での銘板確認や採油作業などは、必ず電気主任技術者など資格を持った専門家に任せることが大切でしょう。
製造年月や型式情報だけではPCB含有の有無を特定できない場合、絶縁油のサンプルを採取して分析機関に依頼する方法があります。ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)などでPCB濃度を測定し、結果を踏まえて高濃度か低濃度か、またはPCB不含有かを確定させます。
ただし、コンデンサーのように内部が密閉されていて油が取り出せない場合は分析が難しいケースがあります。その際は、製造年やメーカー情報から「みなし処理」として低濃度PCB廃棄物に分類する方法も検討できます。また、分析には数万円単位の費用や停電作業の手間がかかることが多いため、事前の見積りやスケジュール管理が欠かせません。
PCBを含むキュービクルを処分するには、電気事業法やPCB特別措置法などの手続きが複数必要になります。大まかな流れとしては、PCB含有かどうかの確認を行ったうえで、以下のようなステップを踏むことが一般的です。
1)電気事業法に基づく届出
低濃度PCBが判明したまま使用を続けるなら、産業保安監督部に「ポリ塩化ビフェニル含有電気工作物設置等届出書」を提出する必要があります。廃止する場合でも、機器の使用状況や廃止年月日などの届け出が求められるので、手続きを怠らないようにしましょう。
2)PCB特別措置法に基づく届出
使用を終えて廃棄物として保管するなら、PCB廃棄物として都道府県や政令市に届け出て、その後、保管状況や処分状況の年次報告を行います。処分が完了したら、あらためて「処分終了届」を提出し、すべてが受理されて初めて手続きは完了となります。
3)保管方法の厳守
PCB廃棄物は特別管理産業廃棄物に指定されており、漏洩や混入を防ぐため、厳格な保管基準が法律で定められています。囲いを設けたり、表示を付けたり、屋外での保管なら屋根や防液堤を設けるなど、安全対策を整えたうえで保管しましょう。保管から運搬に至るまでの間に違反があれば法令違反となるため、管理体制を整えて臨むことをおすすめします。
高濃度PCB(PCB濃度5,000mg/kg超)の処理は、地域や廃棄物の種類ごとに期限が設定されていましたが、ほとんどの地域で2022年前後に終了しています。もし今になって高濃度PCB廃棄物が見つかった場合は、一般的な処理ルートであるJESCO(中間貯蔵・環境安全事業株式会社)の受付はすでに終わっていることが多いため、自治体や環境省の地方支分部局に早急に相談しなければなりません。
PCB濃度が0.5mg/kg超〜5,000mg/kg以下の場合、2027年(令和9年)3月末までに処分を終える義務があります。処分に時間がかかるうえ、分析や見積り作業にも日数を要するため、期限ぎりぎりで手続きを始めると間に合わない可能性があります。期限を過ぎると法的な罰則だけでなく、受け入れ業者が見つからなくなるリスクもあるため、できるだけ早い着手が大切です。
処分をしないまま期限を越えたり、適切な保管や届け出を行わずに放置したりすると、PCB特別措置法や廃棄物処理法などに違反する恐れがあります。内容にもよりますが、懲役刑や高額な罰金が科される可能性があり、法人と個人の両方が罰則の対象となる点にも注意しなければなりません。社会的信用を失うリスクもあるので、法令の順守が求められます。
PCB廃棄物の処理費用は、廃棄物の種類や重量、PCB濃度、運搬距離などで大きく変わります。高濃度PCBであればJESCOの定める処理料金体系に従い、低濃度PCBであれば民間の認定施設や許可業者に処理を委託する形が一般的です。どちらにしても機器の解体や運搬作業、停電に伴う工事費など、処理そのものの料金以外にもさまざまなコストが生じやすいので、個別に見積もりを取って総額を確認すると安心でしょう。
PCB処分には相応の費用がかかるため、中小企業や個人などに対して国や自治体からの補助金や優遇制度が用意されているケースがあります。例えば、高濃度PCBをJESCOで処理するときには「中小企業者等軽減制度」により大きく費用が引き下げられる場合があります。また、低濃度PCBでは分析費用や処分費の一部を補助する仕組みがある自治体もあるため、自社の規模や所在地を踏まえて事前に情報収集すると、費用負担を軽減できる可能性があります。
こうした制度は申し込みのタイミングや書類準備などに制約があるため、処分の契約を結ぶ前に必ず要件を確認することをおすすめします。特に補助金は早めに予算枠がいっぱいになってしまうこともあるので、処分時期が決まったらすぐに問い合わせておくとスムーズでしょう。
ここでは、キュービクルからPCB含有機器が発見された事例についてご紹介します。
電気保安法人が管理システムデータの総チェックを実施したところ、使用中のキュービクルから高圧コンデンサが発見されました。
このキュービクルは確実な品番確認をしないまま「高濃度PCB含有なし」と判断されたもので、管理システムにもそのように登録されていました。
ある事業者が発電機の処分を電気保安法人へ依頼したところ、建物の裏手の使用していないキュービクルから高濃度PCB含有の変圧器とコンデンサを発見しました。
事業者がPCB含有機器を把握していなかった原因は、電気保安法人の担当がキュービクルの情報を異動時に後任担当者へしっかりと引き継がれていなかったことです。
このように、伝達ミスやデータ記入ミスによって新たにPCB含有機器が発見される事例は少なからず存在します。
キュービクル式高圧受電設備のPCB処理の費用は、キュービクル式高圧受電設備に含まれるトランスやコンデンサの種類や量、処理の工程等の様々な要素で変化します。
処理の方法や持ち込み料金や手続き諸費用などが発生するところもあるので、比較しながら検討すると良いかもしれません。いくつかの低濃度PCB処理施設に問い合わせてみるとよいでしょう。
濃度PCBが検出されたキュービクルの場合、JESCOで廃棄処理をするように指定されていますので、そちらも料金を確認したうえで処理を依頼しましょう。
低濃度PCB処理の依頼先を決めるとき最も重要視するのは、PCB処理業者の信頼性ということができます。
なぜなら、PCB含有物の処分をPCB処理業者に委託したとしても、適切な処分完了までの責任は、委託した企業にあるからです。そのために、委託が完了したことの通知がくるまで監督責任が生じます。
このように、低濃度PCB処理業者の選択は、大きな責任があるために、処理業者の信頼性や財務体質までを考慮して選択することが必要になります。
なんとなく近隣の産廃業者を選びがちですが、期限や予算組みを考えると、短期間で確実に処理を完了させられる可能性の高い事業者への依頼がおすすめです。
その指標として、処理能力の高い業者(グループ単位)上位3社(※1)をピックアップしました。低濃度PCB処理における「ビッグスリー企業」への依頼を視野に入れ、スムーズにPCBの廃棄を完了させてしまいましょう。
引⽤元:オオノ開發 https://www.ohno-as.jp/frep/
全国
※日本各地に支店あり
(東京、大阪、福岡、愛媛)
引⽤元:クレハ環境 https://www.kurekan.co.jp/treatment/iwaki.html
北海道、東北、関東、東海
引⽤元:エコシステム秋田 https://www.dowa-eco.co.jp/EAK/pub
公式サイトに記載無し
※1 2021年3月時点、当サイト調べによる。PCB廃油・処理物の1日あたり処理量が最も多い企業およびグループ
※2 2021年3月時点、当サイト調べによる。処理場ひと施設あたりのPCB廃油・処理物の1日あたり処理能力が最も高い