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低濃度PCBとは、電気機器の製造の過程等で何らかの形で混入された微量のPCBのことです。
非意図的に混入されたことが高濃度PCBと異なる点です。
当初は低濃度PCBが含まれた廃棄物を微量PCB廃棄物と呼んでいましたが、2012年からは微量PCB廃棄物と、高濃度PCB絶縁油に由来するPCB濃度が5,000mg/kg以下の廃棄物とを合わせて、低濃度PCB廃棄物と呼ぶようになりました。
低濃度PCB廃棄物は、PCB特措法により2027(令和9)年3月31日までに処分することが定められています。
高濃度PCB廃棄物はJESCOへ問合せて処理しますが、低濃度PCB廃棄物は環境大臣が認定する無害化処理認定施設および都道府県知事等が許可する施設で処理が可能です。
※参照元:環境省「無害化処理認定施設等の処理対象となるPCB廃棄物の拡大に係る関係法令等の改正について」http://www.env.go.jp/press/107555.html
PCB廃棄物の処理ではPCB特別措置法によって処分期限が設けられています。処分期限は計画的処理完了期限の1年前に設定されており、PCB廃棄物の確実な処理が求められています。
しかし「処分業者に委託し処理することが確実な場合」などの条件を満たす場合に限り、PCB廃棄物の処理完了までの期間を1年延長できます(処分期間の末日から起算し1年を経過した日まで=計画的処理完了期限)。なお最終処分期限はエリアにより異なります。
特例処分期限日の適用を受けるためには、都道府県知事への届出が必要です。「特例処分期限日に係る届出」と「処理業者との処分委託契約書の写し」を用意し、保管または所有事業者を管轄する事務所へ提出しましょう。なお、届出が可能な期間は処分期間の末日までとなっています。
絶縁油の入れ替えができないコンデンサは、対応が2つに分かれます。平成3年(1991年)以降に製造されていればPCB汚染の可能性はありませんが、もしも平成3年以前に製造されている場合は、PCB濃度を測定し汚染の有無を確認しなければなりません。
ただし、使用中のコンデンサを絶縁油の採取のために穿孔した場合、使用できなくなってしまうため注意が必要です。
変圧器は絶縁油の入れ替えが可能な機器です。そのため、汚染の可能性の判断は「平成6年(1994年)以降に出荷された機器かどうか」「絶縁油の入れ替え・絶縁油に係るメンテナンスが行われているか」がポイントになります。製造年やメンテナンス実施履歴を確認し、汚染の可能性を調べましょう。
平成6年以降に出荷された機器で、絶縁油の入れ替えやメンテナンスが行われていなければ、PCB汚染の可能性はないでしょう。
安定器にPCBが含有されているかどうかは、「安定器に貼付された銘板に記載さているメーカー」「型式・種別」「性能(力率)」「製造年月」等の情報から判別できます。メーカーに問い合わせるなどの方法で確認しましょう。
PCBを含有する安定器は昭和32年(1957年)1月~昭和47年(1972年)8月までに国内で製造されています。そのため「昭和52年(1977年)3月までに建築・改修された建物」ではPCBを含有する安定器が見つかることがあります。なお、一般家庭用の蛍光灯の安定器にはPCBは含まれていません。
低濃度PCBを処理するには、いくつかの手順を踏む必要があります。
具体的な流れを以下にまとめます。
PCBの分析は専用機器を利用して行うため、専門業者へ依頼する必要があります。
サンプリング(採油)を自分で行い、検体を専門業者へ送付する方法が一般的ですが、電気機器の種類によってはサンプリング作業も業者へ依頼しなければなりません。
たとえばコンデンサのサンプリングは、絶縁油を抜き取るための穴を開け、採油後はしっかりと穴埋めの処置をしなければならないため、素人では実施困難です。
こうした場合は専門業者へ現地での採油を依頼するようにしましょう。
PCBを処理する際は、PCB特別措置法に基づき、官公庁へ届出をしなければなりません。
提出先はPCB廃棄物を保管している事業所を管轄する環境管理事務所になります。
(東京都の場合は「東京都環境局資源循環推進部」)
届出の方法や低濃度PCB廃棄物の処理期限などは、都道府県によって異なるので注意が必要です。
届出はPCBの保管を開始した場合、移動した場合。処分した場合などによって記載する様式が変わりますので、どの様式を使うか事前にチェックするようにしましょう。
PCB処理には期限が設けられていることもあり、期限内に適切かつ確実に処理することが求められています。
そこで環境省では、PCB廃棄物の収集や運搬、焼却処理や洗浄処理などについて詳細に示した各種ガイドラインを発行。必要に応じて改訂を行い、PCB廃棄物の所有事業者や収集運搬業者、処理施設の設置・運用者などが適切な処理を行えるようにしています。
そこで、PCB廃棄物の処理に関するガイドラインや法令等について一覧にして紹介します。
PCB処理においては、補助金・助成金の制度が設けられています。
都道府県によって制度の種類は異なりますが、各自治体のホームページ等で確認する必要があります。
PCB処理で活用できる補助金とは
早期のPCB処理促進を推進する
PCB廃棄物処理基金について解説
PCB処理費用の会計処理について
東京都の場合は、以下のものが助成対象です。
なお、助成金の額は「助成対象経費の合計から同等の低濃度PCBを含まない廃棄物の処理に要する経費の合計を控除した額の2分の1」となっています。
PCB廃棄物を収集運搬するには、廃棄物処理法で定める特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可を取得しなければなりません。
収集運搬に当たっては、多量に持ち出す場合は専用のタンクローリーで行い、少量の場合はドラム缶で絶縁油を回収して輸送します。
また収集運搬に従事する作業者について、全員が1年以内にPCB廃棄物やPCB汚染物に関しての教育を受けていなければならず、さらに収集運搬のための積込みや積下しといった作業を行う際には漏えい防止措置など必要な対策を講じた上で、保管事業者や収集運搬業者、処分業者などの責任者が現場に立ち会って確認しなければなりません。
なお船舶による運搬については運搬船の船長や適切な代行者による立ち会い確認も必要となります。
PCB廃棄物の処理が終わった場合、廃棄マニフェストを提出しなければなりません。
マニフェストにはA~E票まで種類がありますが、最終処分できたことを示すマニフェストE票が排出事業者へ返送されます。
最後に受領したE票の写しを処分完了届に添付して事業所を管轄する環境管理事務所へ提出することで、手続き完了となります。
低濃度PCBはすぐに処理できるものではなく、最低4ヶ月はかかります。処理に時間がかかる要因としては、PCB含有量の分析作業が必要になるほか、処理を依頼する業者の選定や現場調査、運搬のための車両の手配や道路の使用許可の取得などが必要になるためです。
処分期限内に処理するためには、処理に時間がかかることを考慮したうえで、早めに対応することが求められます。
PCB廃棄物は、大きく「高濃度PCB廃棄物」と「低濃度PCB廃棄物」に分類されます。
具体的には、CB濃度が0.5%(=5,000ppm)を超えるものが高濃度PCB廃棄物、PCB濃度が5,000ppm以下で且つ0.5ppmを超えるものが低濃度PCB廃棄物となり、0.5ppm以下であればPCB廃棄物には該当されません。
ただし、橋梁等の塗膜や感圧複写紙といった可燃性のPCB汚染物の場合、PCB濃度が100,000ppm以下であれば低濃度PCB廃棄物に分類されるようです。
さらに、以下の4種類に分類することができます。
低濃度PCB廃油とは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第2条の4第5号イ」に規定されており、「微量PCB汚染廃電気機器等」と「低濃度PCB含有廃棄物」に分けられます。
まず微量PCB汚染廃電気機器等とは、「電気機器またはOFケーブルに使用された絶縁油で、微量のPCBによって汚染された廃棄物」のこと。たとえば廃電気機器由来の絶縁油や変圧器、コンデンサーなどが挙げられます。
また、低濃度PCB含有廃棄物とは「主に液状物であり、具体的にはPCB濃度が5,000mg/kg以下の廃油等」をさします。
低濃度PCB汚染物とは、「令第2条の4第5号ロ」に規定するPCB汚染物であり、「微量PCB汚染物」「低濃度PCB含有汚染物」などを表します。
微量PCB汚染物とは、微量のPCBに汚染された絶縁油が塗布・染み込み・付着・または封入された廃棄物のこと。
また、低濃度PCB含有汚染物には以下が該当します。
低濃度PCB処理物とは、「令第2条の4第5号ハ」に規定するPCB処理物であり、「微量PCB処理物」「低濃度PCB含有処理物」があります。
微量PCB処理物とは、微量PCB汚染絶縁油や微量PCB汚染物を処分するために処理したもののこと。
また、低濃度PCB含有処理物とは、廃油のうち、1kgにつき5,000mg以下のPCBが含まれているもの。廃酸や廃アルカリ、汚泥・紙くず・木くず・繊維くず、廃プラスチック類、金属くず、その他の処理物などが挙げられます。
分類されたPCB廃棄物によって、その処分方式も異なってきます。以下に、各処理方式とその特徴をまとめています。
薬剤などによって脱塩素化反応を起こし、PCBを構成する塩素を分解して水素に置き換え、PCB以外の物質に変化させる方式です。
廃PCB等およびPCB汚染物(廃油・廃酸・廃アルカリ)、PCB混入廃電気機器の処理に適合します。
高温・高圧力によって反応性を高めて超臨界という特殊な状態となった「超臨界水」内で、PCBを含む有機物を水・塩素・二酸化炭素に分解する方式です。
廃PCB等・PCB汚染物・PCB処理物・PCB混入廃電気機器すべての処理に対して国から技術認定を受けています。
水素や一酸化炭素といった還元性ガスを多く含む還元雰囲気下(約1,400℃)における熱化学反応によって、PCBを塩素・燃料ガスに分解する方式です。
水熱酸化分解と同様、すべての処理に対して国から技術認定を受けています。
紫外線による光化学反応によってPCBを分解して低塩素化し、反応後の混合物を脱塩素か分解または生物分解して処理する方式です。
処理できるPCB廃棄物は、脱塩素化分解と同じです。
アルゴンガスなどのプラズマによる3,000℃以上の高温下にてPCBを炭素ガス・塩化水素・水素などに分解する方式です。
処理できるPCB廃棄物は、脱塩素化分解や光分解と同じです。
低濃度のPCBを1,100℃以上という高温の炉で一気に燃焼し無害化する方式です。
従来のPCB処理技術として高温焼却が定められていましたが、処理温度によってはダイオキシンなどの発生が懸念されていることから、日本ではあまり普及していないようです。
機械的エネルギーによって化学変化を起こす「メカノケミカル反応」の原理を活用した、非加熱分解による処理方法です。
紙くず・木くず・繊維くず・金属くず・廃プラといったPCB汚染物の処理に適合します。
千数百度以上という高温で文字通り溶融分解することで、有機物は分解・ガス化、無機物はガラス固化体及び金属体となります。
処理できるPCB廃棄物は機械化学分解と同様で、さらにPCB汚染土壌に対しても適用される方式となっています。
油などを除く洗浄可能なPCB処理物および、トランスやコンデンサなどを解体したPCB汚染物を溶剤で洗浄する方式です。
PCBは化学処理によって無害化処理され、使用した溶剤はPCBを分離・除去した後に再利用されます。
VTR(Vacuum Thermal Recycling)法に代表される、ほぼ真空の状態で加熱することでPCBを分離・蒸発させる方式です。
トランスやコンデンサなどの内部構造が複雑な電気機器は解体できずPCBの完全な除去は困難でしたが、この方式であれば残らず取り除くことが可能となります。
高濃度PCB処理の場合は、各都道府県市がマニュアルに沿ったアンケート形式の掘り起こし調査などを行い、進捗状況を把握することとしています。しかし、低濃度PCB処理の場合、こういった取り組みはなく、処理に関しても民間の処理業者が行っているため、国内全体の処理状況はしっかりと把握できていないのが現状です。
低濃度PCB廃棄物の処理事業者は、環境大臣が認定する無害化処理認定事業者、都道府県市の長からPCB廃棄物に関わる特別管理産業廃棄物の処分業許可を得た事業者の2種類があります。どちらも以前はかなり少数でしたが、年々数は増えています。
左は環境省中部地方環境事務所の調査による「無害化処理認定数および、低濃度PCB汚染廃電気機器の焼却処理能力推移」を表すグラフです。こちらを見ると、年々、事業者数や処理能力が増加していることがわかります。
処分期間は令和9年(2027年)3月31日までであり、期限が迫っているため、今後も増加することが予想されます。地域による格差も解消してきており、処分のハードルは以前より下がっています。
なお、「廃棄物処理法第15条の4の4の第1項に基づく無害化処理認定事業者」は全国で34事業者、「廃棄物処理法に基づき、微量PCB汚染廃電気機器等の処分業に係る都道府県知事等の許可を受けた事業者」は全国で5事業者となっています。(令和3年1月18日現在)
かつて電気機器の絶縁油などとして使用されてきたPCBは、人への健康被害の恐れがある物質として、国内での生産・輸入が禁止されています。
現在はPCB特措法の制定を受けて、PCB廃棄物の確実かつ適正な処理が進められており、さらに平成28年8月に施行された改正法にて期限内の処分の義務付けが明記されました。
高濃度PCB廃棄物の処理については2023年(令和5年)3月31日が処理期限とされており、全国に5箇所あるJESCOの処理施設にて廃棄処理が行われています。
低濃度PCB廃棄物については2027年(令和9年)3月31日が処分期限となっており、環境大臣認定の無害化処理認定事業者および都道府県市から許可を得た、いずれも民間の処理事業者によって処理が行われています。
なお、民間の処理事業者については地域によってその数にばらつきがあるようですが、今後さらに増加する見込みとなっており、PCBの処理はさらに進んでいくものと予測されています。
海外における低濃度PCB処理は、日本とは処理基準が異なっています。各国のPCB処理基準を見ていくと、フランスやオーストラリアで50mg-PCB/kg、イギリスやドイツで10mg-PCB/kg、アメリカやカナダで2mg-PCB/kg、オランダで1mg-PCB/kgなどとなっています。
一方、日本の基準は0.5mg-PCB/kgであり、もっとも厳しい基準です。PCBの処理方法の技術的な面においては、日本と海外で大きな違いはありません。しかし海外では、高濃度のPCB絶縁油を効率的に処理するため、高温焼却による処理が基本的となっています。
また、低濃度PCBについては、焼却処理が多い日本と違い、低濃度PCB絶縁油を再生利用するため化学的な処理が行われています。処理施設における周辺環境や労働環境上の安全対策がさほど厳格ではないという点も、日本と異なる特徴です。
なんとなく近隣の産廃業者を選びがちですが、期限や予算組みを考えると、短期間で確実に処理を完了させられる可能性の高い事業者への依頼がおすすめです。
その指標として、処理能力の高い業者(グループ単位)上位3社(※1)をピックアップしました。低濃度PCB処理における「ビッグスリー企業」への依頼を視野に入れ、スムーズにPCBの廃棄を完了させてしまいましょう。
※1 2021年3月時点、当サイト調べによる。PCB廃油・処理物の1日あたり処理量が最も多い企業およびグループ
※2 2021年3月時点、当サイト調べによる。処理場ひと施設あたりのPCB廃油・処理物の1日あたり処理能力が最も高い