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高濃度PCBであれば機器の型番や製造年月日などで判断できますが、低濃度PCBの場合はPCB濃度の測定を行うのが一般的。電気機器などの対象物にどれほどのPCBが含まれているかを分析し、低濃度PCB廃棄物として処理する必要があるのか、PCB廃棄物には該当しないのかについてまず判断する必要があります。
PCBは人体へ悪影響を及ぼすことから、昭和47年にはPCB製品の製造は中止されました。その後平成13年に施行されたPCB特措法によりPCB廃棄物の処理は進んでいるかのように思われましたが、本来PCBが使用されていないはずの電気機器からPCBを検出。さらにその数は膨大であり、PCB廃棄物の確実な処理が求められました。
こうした背景から、PCB含有分析によってPCB廃棄物の適正処理につなげることが重要だと考えられているのです。
たとえばPCBを含有している可能性のある絶縁油では、定量分析法(精密定量法と簡易定量法)や迅速判定法を用いてPCBの含有濃度を測定します。測定の結果PCBを含有していない・0.5mg/kg以下であればPCB廃棄物に該当せず産業廃棄物として扱われますが、0.5mg/kg超~5,000mg/kg以下のものは低濃度PCB、5,000mg/kg超のものは高濃度PCBに判別されます。
なお、低濃度PCBと高濃度PCBは処理方法も異なり、低濃度PCB廃棄物は無害化処理認定施設にて処分を行い、高濃度PCB廃棄物は全国5箇所にある中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)での処理が必要となります。
機器分析法とは、分析機器を用いてガスや電子などによってPCB含有濃度を検出する方法です。成分ごとの特徴的な分子・電圧を検出することで、これまで困難とされていた分析も可能としています。
PCBの分析に用いる機器にはGC/ECD や GC/MSなどがあります。GC/ECDはGC(ガスクロマトグラフ)/ECD(電子補足検出器)を意味しており、残留PCBの検出が可能。コレクタにイオン電流を補修し、電流を一定にするための電圧値の変化を読み取りPCBを検出します。
また、GC/MSはGC(ガスクロマトグラフ)/MS(質量分析法)を意味しており、GC(ガスクロマトグラフ)で分離した成分の検出にMS(質量分析法)を用います。その質量情報から成分の定性や定量を行い、PCBを検出します。
生化学的分析とは、生物化学的な手法における試験や定量を行うことで対象物の分析を行う手法です。簡易定量法では加熱多層シリカゲルカラムやアルミナカラム、フロー式イムノセンサー法などを用いてPCBを検出します。
また、迅速判定法では高濃度硫酸シリカゲルカラムやフロースルー式免疫測定法(イムノアッセイ)を用いてPCBを検出します。
洗浄後の部材の汚染程度を調べるために、洗浄液濃度を測定する試験方法です。ただし間接的な評価であるため、たとえばPDBの溶けだしが不十分な場合にPCB濃度が低く検出される可能性があります。そのため、不十分な溶けだしや洗浄状態のばらつきが生じないよう洗浄条件の検討が必要。前処理工程での解体・分別の程度や、部材と洗浄溶剤が十分に接触するよう注意しなければなりません。
処理後の部材の表面の拭き取りを行ってPCB濃度を測定する試験方法です。拭き取り試験法では、対象の部材のみを拭き取った表面(500cm2)であることが重要。そのため、処理工程が異なる部材をまとめて拭き取ったものを評価するべきではありません。処理工程が異なる場合は処理状態のばらつきを明確にし、試料を採取する位置や採取量を検討することが必要です。
拭き取り試験法が適している部材は、タンクや配管類、電気機器の容器など。一定の材質で一定規模の面積のある部材などが挙げられます。
処理後の部材から試験を行う分を採取してPCB濃度を測定する試験方法です。拭き取り試験法と同様に、試験を行う部分(採取した部分)が主な部材であることが重要です。なお、部材採取試験法が適している部材として、前処理で粉砕や切断を行った部材のほか、拭き取り試験が難しい小型部材などが挙げられます。
絶縁油中の微量 PCB濃度が基準値以下であるかどうかをスピーディに判定できる測定方法です。変動係数30%未満・偽陰性率 1%未満の測定方法であることが前提。GC/ECD法やLRGC/ECD法、GC/NICI-MS法、フロースルー式免疫測定法(イムノアッセイ)などがあります。
PCB汚染物は、その区分によって適した検定方法が異なるほか、検定方法によって判定基準も異なります。
廃PCB等の処分に用いた処理済み油は「廃油中PCB分析方法」によって検定します。
トリクロロエチレンやテトラクロロエチレン、または同等以上の洗浄力のある洗浄液を用い、循環洗浄や浸透洗浄した場合のみ、廃油(洗浄液)を「洗浄液試験法」にて検定します。
廃プラスチックや金属くずには「洗浄液試験法」「拭き取り試験法」「部材採取試験法」から適した試験法を選んで検定します。なお、試験方法によって判定基準値は異なります。
廃酸や廃アルカリは環境省が示した「特別管理産業廃棄物に係わる基準の検定方法」に沿って試験を行います。
廃液や廃油、廃プラスチックや金属くず、廃酸又は廃アルカリに該当しないその他の対象物は「特別管理産業廃棄物に係わる基準の検定方法」に沿って試験を行います。ただし、海洋投入処分に係わる方法に限ります。
環境省が示した「低濃度PCB含有廃棄物に関する測定方法(第5版)」では、簡易定量法の検出方法が以下のように詳しく示されています。
なお、たとえば
上記を対象とした場合は各GC/ECD法やGC/HRMS法、GC/MS/MS 法、GC/QMS 法、GC/NICI-MS 法、フロー式イムノセンサー法などで含有試験や表面拭き取り試験、表面抽出試験などを行います。
ただし塗膜くずに関しては各 GC/ECD 法、GC/NICI-MS 法、フロー式イムノセンサー法では充分な分析が困難であることから、GC/HRMS 法やGC/MS/MS 法、GC/QMS 法を用いるよう記載されています。
PCB処理では対象製品がどのくらいのPCBを含有しているかを調べるため、まず分析する必要があります。PCB含有分析を行ってから処理へ向けて収集運搬を行う流れですが、分析から処理まで一貫して対応できる業者に依頼するのがおすすめです。
分析と収集運搬・処理は別の業者へ依頼することもできますが、余計な手間やコストがかかってしまいます。そのため、PCB含有分析から処理までワンストップで対応してくれる業者を選びましょう。結果として処理コストを抑えることが可能です。
東京・大阪・福岡・愛媛に支店をもち、広域対応が可能なオオノ開發。PCB処理では分析から最終処分まで可能な一貫処理体制を実現しているため、保管事業者の負担となる手間やコストを省くことができます。
分析では複数の方法を採用しており、対象物に合った分析が可能。要望に応じてオオノ開發のスタッフが現地までサンプリングに来てくれます。分析の結果低濃度PCB廃棄物であることが判明した場合には、処理へ向けて収集運搬を依頼できます。
なお、オオノ開發では大規模な保管施設を有しているため、多くのPCB廃棄物を受け入れることができるのも強みのひとつ。収集運搬・処理の受け入れ待ちになる心配がありません。
北海道・東北・関東・東海地域の廃棄物の収集運搬を行っているクレハ環境。福島県にある「ウェステックいわき」に分析施設を設置しており、産業廃棄物の分析を行ってから処理方法を決定しています。
PCB廃棄物の分析も行っており、処理まで一貫した対応が可能。低濃度PCB廃油や低濃度PCB汚染物、低濃度PCB処理物などの廃棄物を処理しています。分析結果の台帳作成やコンクリートや土壌、地下水の現地調査のほか、PCB処理の相談にも乗ってくれるため、PCB廃棄物の処理に困っている方は問い合わせてみると良いでしょう。
群馬県太田市に本社を置く群桐エコロ。広大な敷地を誇る処理施設「群馬ハイブリッドクリーンセンター」をもっており、廃棄物から生まれる人工砂「サーブルオール」も製造しています。
処理施設内の分析室ではさまざまな分析装置を導入しており、PCB廃棄物の分析も可能。PCB分析前処理装置などを用いて分析してくれます。なお、処理対応が可能なPCB廃棄物は、低濃度PCB廃油や低濃度PCB廃電気機器、低濃度PCB汚染物、低濃度PCB処理物など。幅広い品目に対応してくれます。
問い合わせは電話やメールで行えるため、PCB処理を依頼したい方は早めに相談しましょう。
PCB含有分析から処理までをワンストップサービスとして提供する会社でなく、特にPCB含有分析や各種データ解析などに関するサービスを提供している会社や業者についてご紹介します。
すでにPCB含有機器やリスクを把握しているのでなく、自社にPCB含有リスクが存在しているのか確認したい方は、ひとまず分析を業者へ依頼すると良いでしょう。
京都市にあるGSユアサ環境科学研究所では絶縁油を使用している高圧・低圧トランスや高圧・低圧コンデンサ、OFケーブルなどを対象として、微量PCB分析(0.13mg/kg)を行っています。
分析にかかる期間はおよそ14日間となっており、絶縁油中のPCBが0.5mg/kgを超過していないかどうかを法の定める基準や方法に則って適切に検査してくれます。
日新環境調査センターでは2003年から絶縁油のPCB濃度分析に対応しており、専門スタッフが現地まで出張して試料採取を行うといった包括的なサポートが強みです。なお出張試料採取ではそれぞれの企業が保管しているコンデンサや拭き取り試験などにも対応しており、自社対応を希望する場合には専用のサンプル採取キットを用意してもらえます。
内藤環境管理は埼玉県さいたま市に拠点を置く企業であり、PCB分析を含めて様々な分野や領域における環境管理・衛生管理・化学分析といった業務を提供しています。
様々なニーズに合わせて、分析対象となる物質や環境に適した分析ノウハウを構築しており、PCB含有物についても最短3日営業日という納期で簡易分析に対応します。
ユカインダストリーズは絶縁油に含有されているPCBの分析を専門に取り扱っている専業会社です。環境省が公開している「絶縁油中の微量PCBに関する簡易測定法マニュアル(第3版)」に準拠した分析方法を採用しており、さらに社団法人日本環境測定分析協会によるクロスチェックへの参加など精度管理の向上にも尽力しています。
オオスミは1968年に設立された企業であり、半世紀以上にわたって環境分析や環境調査、さらに環境負荷の軽減を目指す企業に対して環境コンサルティングといったサービスを提供しています。PCB分析については環境省のマニュアルに則って微量PCB分析を行っており、PCB廃棄物所有者のために調査ガイドブックなども作成・配布しています。
一般的なPCB含有分析はサンプル試料を採取した上で、それを分析業者の専用機器で分析してもらうといった流れになりますが、絶縁油に含まれる低濃度の微量PCBに関しては特別な知識や大型分析機器がなくても簡易的に分析できる「PCB検査キット(PCB簡易検査キット)」が市販されています。
抗原抗体反応を利用したPCB検査キットは検査試薬の高感度化によって低濃度サンプルも検査できるよう調整されており、低濃度PCB汚染変圧器の無害化工程などにも採用されている点ことが特徴です。
基本操作については初期に多少の訓練が必要ですが、慣れれば特別な資格などを持たない人でも数時間で検査することが可能となり、検査コストを抑えられる点もメリットです。
なんとなく近隣の産廃業者を選びがちですが、期限や予算組みを考えると、短期間で確実に処理を完了させられる可能性の高い事業者への依頼がおすすめです。
その指標として、処理能力の高い業者(グループ単位)上位3社(※1)をピックアップしました。低濃度PCB処理における「ビッグスリー企業」への依頼を視野に入れ、スムーズにPCBの廃棄を完了させてしまいましょう。
※1 2021年3月時点、当サイト調べによる。PCB廃油・処理物の1日あたり処理量が最も多い企業およびグループ
※2 2021年3月時点、当サイト調べによる。処理場ひと施設あたりのPCB廃油・処理物の1日あたり処理能力が最も高い