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人体へ有害であることから、早期の適正処理が求められているPCB。
PCBは人体に付着した場合だけではなく、土に混ざることで周囲の土壌汚染を引き起こします。たとえば、PCBを含む排水が漏れる・PCBを含む廃棄物が土に埋められ、雨によってPCBが周囲の土に溶けだすなどの要因から土壌が汚染されます。土壌汚染は目に見えず、一旦汚染されると長期間にわたって影響を及ぼします。
所有地にPCB廃棄物が存在している場合、土壌汚染対策法やPCB特別措置法といった法令や条例の規制を受けることがあります。
PCBは人体に皮膚症状や倦怠感やしびれなどさまざまな症状を引き起こすことから、土壌汚染が見つかった場合は適切な処理を行わなければなりません。
土壌が汚染されていると、
などのリスクがあります。PCBが人体に直接付着することはもちろん、PCBによって汚染された土が生活環境や生態系へ影響を与えることでさまざまな健康被害を引き起こします。
土壌汚染対策法において、以下のような場合は土壌汚染調査と報告を行う必要があります。
情報参照元:環境省HP「土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告示、通知)」
また、不動産取引や資産価値評価に伴う評価や、環境サイトアセスメント(ISO14015)などのISO14000シリーズに伴う自主的な環境管理においても土壌汚染調査が必要になります。
なお、もしも購入した土地に土壌汚染が認められた場合、土地の売り主や汚染原因者に対策費用相当額の支払いを求めるなどをし、土地の所有者が土壌汚染対策を行うことになるでしょう。
所有地に変圧器などがあったとしても、密閉された容器に封入されているという考えのもと調査対象とならないことが多いようです。以下のようにPCB廃棄物によって土壌汚染を引き起こしている可能性がある場合には、土壌汚染調査の対象となります。
このような場合には、PCBによる土壌汚染の可能性が高いと考えられ、調査を命じられます。
なお、土壌汚染調査では表層土や被覆下から50㎝の土壌を採取します。土壌からPCBが溶け出す溶出量を調べ、土壌汚染の有無を判断します。
土壌汚染対策法は土壌汚染による人への健康被害防止を目的として、、2003年2月15日に施行されました(2010年4月に改正)。同法には土壌調査が必要な場合や区域の指定、汚染土壌の搬出に関する規制、指定調査機関・法人などが示されており、従わない場合は罰則を受ける可能性があります。
土壌汚染対策法によって土壌調査を命じられた場合、土地の所有者は調査をおこなう義務があります。
調査の結果汚染が認められなければ問題ないものの、汚染が認められた場合は区域の指定や台帳の調製を行います。都道府県都知事が要措置区域と形質変更時要届出区域に区分けを行い、汚染が除去された時に指定が解除されます。
まず要措置区域とは、土壌汚染が認められ、人への健康被害の可能性がある場合に指定される区域です。要措置区域に指定された場合は汚染を除去もしくは汚染の拡散防止・措置を行う必要があります。
一方、形質変更時要届出区域とは、土壌汚染が認められたものの汚染の摂取経路がなく、人への健康被害の可能性がない場合に指定されます。
情報参照元:環境省HP「土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告示、通知)」
土壌汚染対策法において、PCB(ポリ塩化ビフェニル)は第三種特定有害物質に認定されています。
特定有害物質の種類 | 基準 | 数値(mg/l) |
---|---|---|
ポリ塩化ビフェニル(PCB) | 土壌溶出量基準 | 検出されないこと |
第2溶出量基準 | 0.003以下 | |
地下水基準 | 検出されないこと |
情報引用元:【PDF】環境省 水・大気環境局 土壌環境課 「汚染土壌の処理業に関するガイドライン(改訂第2版)」
調査によって汚染が確認された土壌は、土壌汚染対策法に基づいた適切な処理を行うよう土壌汚染対策法で定められています。
まず、汚染土壌処理施設の種類には下記の施設があります。
PCBによる汚染が認められた土壌に異物などが混ざっている場合は分別等処理施設にて処理を行います。分別する必要がなければ浄化処理施設に汚染土壌を搬出し、熱処理や洗浄処理、化学処理、融解処理などを行います。
第2溶出量基準以下となった汚染土壌は埋め立て処理施設やセメント等処理施設へ運ばれ、セメントの原材料として使われたり埋め立てられたりします。
情報引用元:【PDF】環境省 水・大気環境局 土壌環境課 「汚染土壌の処理業に関するガイドライン(改訂第2版)」
また、それぞれの施設で行われる汚染土壌の処置や措置方法にも、「掘削除去」や「オンサイト浄化」、「原位置浄化」といった複数の種類が存在しており、どの処理方法を実施すべきか状況や条件に応じて適切に判断しなければなりません。
以下では汚染土壌の具体的な処理方法について紹介しますので参考にしてください。
掘削除去とは、文字通り汚染されている土壌を油圧ショベルなどの重機で掘削し、汚染土壌を物理的に取り除いてしまう除去方法です。
掘削除去は全ての汚染物質に対応することが可能であり、汚染土壌に対する浄化能力と具体的な工期の管理性などに優れているため、汚染土壌の対処法として選ばれやすい処理の1つです。ただし、重機を使って土壌を除去するため作業空間が必要になり、土壌を除去した後の埋め戻し作業なども行わなければなりません。加えて除去した汚染土壌は適切な処理施設まで運搬した上で改めて対処しなければならず、結果的に処理にかかるトータルコストが高額になりやすく、またPCBによって汚染されている範囲や深さを正確に把握しなければならないといった課題もあります。
なお、区域外における処理については基本的に掘削除去が選択されることもポイントです。
区域内措置の1つであるオンサイト浄化は、PCBによって土壌汚染が発生している現地において、薬剤を使用して直接に土壌の浄化を行う方法です。
具体的な手順としては、まず汚染土壌を掘削し、専用の浄化剤を使用して土を浄化処理した後、改めてその土を掘削した場所へ埋め戻すという流れになります。
掘削除去と比較して掘削後の汚染土壌を他の場所まで運搬したり、埋め戻し用の土などを別途用意したりする必要がないため、掘削除去よりもコストや環境負荷を軽減できることがメリットです。反面、浄化できる汚染物質が限定的であり、浄化範囲が一定以上の規模にならなければコストパフォーマンスが悪化するといった課題もあります。
原位置浄化もまた区域内措置の1つですが、特徴として現地での掘削作業を行わず、汚染された土壌へ薬剤や微生物製剤などを直接注入したり、地下水をくみ上げたりして現場で直接に浄化処理を行う方法です。
掘削作業を不要とするため低コスト化を目指しやすく、環境への影響も抑えやすい反面、浄化完了までの時間が予測困難といったデメリットもあります。そのため実際に浄化が完了するまで定期的なモニタリングを継続しなければなりません。
封じ込め・遮断工法は、土壌汚染に対して直接に除去や浄化処理を行うための対策でなく、現状の汚染範囲をそれ以上に拡大させないよう、汚染を食い止めるための方法として用いられます。
例えば、汚染されている土壌を掘削した後、土が取り除かれた場所へ遮水構造物や遮蔽壁などを設置して、再びそこへ土を埋め戻します。これにより、汚染土壌が遮蔽物によって周囲の土壌や地下水から隔絶されるため、汚染物がそれ以上は周辺に拡散せず汚染拡大を防止することが可能です。
また地表面に関してはアスファルトやコンクリートなどによって舗装工事を行い、汚染土壌を地下に封じ込めることで地表の安全をクリアにするといった方法が検討されます。
以上のような処理方法や対策については、実際の汚染の種類や現場の状況、予算や工期といった条件を総合的に考慮して最適なものが選択されます。なお、近年はより環境負荷の少ない浄化方法として、化学薬品でなく微生物などの力を利用した「バイオレメディエーション」が注目されていることもポイントです。
バイオレメディエーションとは、微生物などの働きを活用して汚染物質を分解し、土壌地下水等の汚染を改善させる技術のことをさします。重金属や石油系炭化水素、炭化水素系溶剤、殺虫剤・防腐剤のほか、ポリ塩化ビフェニル(PCB)によって汚染された土壌の浄化が可能。
土壌汚染等の対策として物理的あるいは化学的な手法が用いられていますが、バイオレメディエーションは多様な汚染物質に対応できる可能性をもつうえ、コストを抑えられるという魅力があります。
また、バイオレメディエーションは、大きく分けると「バイオオーグメンテーション」と「バイオスティミュレーション」に分類されます。
バイオオーグメンテーションとは、汚染物質を分解するための分解菌を新たに加える方法です。分解菌を外部で培養させ、汚染物質に添加します。バイオスティミュレーションでは浄化が困難な場合にも活用できます。
バイオスティミュレーションとは、汚染された土壌内の微生物に水・酸素・栄養物質を供給して浄化を図る方法です。土壌にもともと存在する微生物を活用するため、土壌内に微生物が極端に少ない・存在しない場合にはバイオスティミュレーションを適用できません。
ファイトレメディエーションとは植物を用いて汚染された土壌を浄化する方法です。植物には有害物質を吸収・蓄積・分解するという働きがあり、汚染土壌に植物を植え付けることで汚染物質うぃ吸収させます。汚染物質を吸収した植物はその後持ち出され、焼却処理を行います。
PCBは人工的につくられた化学物質のため、分解が困難という特徴をもっています。そのため物理的あるいは化学的な処理が行われていますが、バイオレメディエーションやファイトレメディエーションでも浄化可能なことがわかっています。
バイオレメディエーションは、既に重油やガソリンなどによる汚染浄化として用いられています、PCBへの有効性も認められていますが、今まで見つかった微生物では分解能力が不十分なのだとか。そのため分解能力を上げる研究が進められています。
また、ファイトレメディエーションは主にアメリカやカナダ、ヨーロッパなどで研究が進められており、日本での研究開発や事業化はあまり進んでいないのが現状です。
情報参照元:環境省「微生物によるバイオレメディエーション」
情報参照元:国立研究開発法人 国立環境研究所「バイオレメディエーション」
情報参照元:独立行政法人製品評価技術基盤機構「バイオレメディエーションとは?」
なんとなく近隣の産廃業者を選びがちですが、期限や予算組みを考えると、短期間で確実に処理を完了させられる可能性の高い事業者への依頼がおすすめです。
その指標として、処理能力の高い業者(グループ単位)上位3社(※1)をピックアップしました。低濃度PCB処理における「ビッグスリー企業」への依頼を視野に入れ、スムーズにPCBの廃棄を完了させてしまいましょう。
引⽤元:オオノ開發 https://www.ohno-as.jp/frep/
全国
※日本各地に支店あり
(東京、大阪、福岡、愛媛)
引⽤元:クレハ環境 https://www.kurekan.co.jp/treatment/iwaki.html
北海道、東北、関東、東海
引⽤元:エコシステム秋田 https://www.dowa-eco.co.jp/EAK/pub
公式サイトに記載無し
※1 2021年3月時点、当サイト調べによる。PCB廃油・処理物の1日あたり処理量が最も多い企業およびグループ
※2 2021年3月時点、当サイト調べによる。処理場ひと施設あたりのPCB廃油・処理物の1日あたり処理能力が最も高い