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PCB汚染物とは、文字通り「PCBによって汚染(使用)されている物質」となります。
PCBは「ポリ塩化ビフェニル:Poly Chlorinated Biphenyl」の頭文字を取った略称であり、一般的には「人工的に製造された油状の化学物質」とされています。
化学的に安定していて不燃性にも優れているなど、製造業界で有利な特性を持っているため電気機器の絶縁油やノンカーボン紙といった製品の製造に使われていました。しかし人体に毒性があることから、現在は製造や輸入が全て禁止されています。
PCB汚染物とは一般的に「PCBを使用されている物質(機器や製品)」と考えることが可能であり、PCBを使用した変圧器やコンデンサー、安定器といったものから、PCBが塗布された紙くずやPCBが染みこんだ木くず、汚泥といったものまで様々なものが存在しています。
PCB汚染物の種類に応じて適切な処理方法を考えなければならず、焼却や洗浄など複数の方式によって処理が実行されていることも特徴です。
以下にPCB汚染物の一例を紹介します。
感圧複写紙は、ペンなどで文字を書き込んだ際の圧力を使って複写するための用紙であり、一般的には「ノーカーボン紙」とも呼ばれています。現在はPCBの使用が禁止されているものの、昭和46年より以前にはPCBを使った感圧複写紙が生産されており、環境省の発表では現在も各地にPCBを使った感圧複写紙が残っていると注意喚起されていることが重要です。
ウエスのように、PCBの染みこんだ繊維(繊維くず)についてもPCB処理の対象になっていることがポイントです。検疫中のPCB濃度が0.003mg/Lよりも多い場合、汚染物として扱われます。
PCBの染みこんだ汚泥もPCB汚染物とされており、卒業基準は「検疫中濃度0.003mg/L」です。
PCBの危険性が広く認知され、健康被害への危機意識が高まった契機は、一般的に1968年に発生した「カネミ油症事件」とされています。
これは、食用油を製造する過程において、熱媒体として使われていたPCBが食用油へ混入して消費者に健康被害が発生した食中毒事件です。実際の症状は全身の倦怠感や色素沈着、食欲不振など様々なものであり、やがて1972年に製造が公的に禁止されました。
その後、PCBを使った製品や機器の回収及び処分が官民一体となって進められています。
PCBの処分や回収は1972年から現在に至るまで続けられていますが、かつて様々な分野や業界、製品において使用されていた経緯もあり、さらに発見・回収されていないPCB汚染物について、保管の長期化による影響として環境汚染へのリスクも懸念されました。
そのため平成13年7月からは「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB 特措法)」が施行されています。
ただし環境省が発表した「PCB特別措置法に基づくPCB廃棄物の保管等の届出の全国集計結果」などによると、高圧変圧器やコンデンサーなど高濃度PCB汚染物については処理が進んでいるものの、微量のPCBに汚染された紙くずや木くず、繊維くずといった低濃度PCB汚染物については処理が進んでおらず、現在も各地に保管されていることが示唆されています。
PCB汚染物といっても、使用されているPCBの濃度や量、また汚染物の形態や種類などによってその内容は様々です。
変圧器やコンデンサー、安定器のように絶縁油としてPCBが積極的に使われていた古い機器、または濃度「100,000mg/kg超」の可燃性PCB汚染物や「5,000mg/kg超」の不燃性PCB汚染物などは、高濃度のPCBによって汚染されていると考えられ、その処理先は「中間貯蔵・環境安全事業(株)(JESCO)」が指定されています。
その他の「微量のPCBに汚染された廃電気機器や汚染物」については、無害化処理認定施設によって処理可能です。
実際にどの程度のPCBに汚染されているかは高分解能GC-MSといった分析機器を使い、それぞれの形態や特性に合わせてPCBの濃度分析が行われます。
PCB汚染物の廃棄については以下のような流れが必要です。なお、以下は低濃度PCB汚染物についての解説になるため注意してください。
低濃度PCB汚染物の処理作業については、公的に無害化処理事業者として認定されている事業者へ委託しなければなりません。また、どの程度のPCBが含有されているのか、汚染物ごとに適切な分析や処理方法を採用しているかどうかも重要です。
なお、処理事業者へPCB汚染物を運搬する際にも安全管理や環境汚染対策を考えなければならず、可能であれば専門業者による収集運搬も任せられると安心でしょう。
なんとなく近隣の産廃業者を選びがちですが、期限や予算組みを考えると、短期間で確実に処理を完了させられる可能性の高い事業者への依頼がおすすめです。
その指標として、処理能力の高い業者(グループ単位)上位3社(※1)をピックアップしました。低濃度PCB処理における「ビッグスリー企業」への依頼を視野に入れ、スムーズにPCBの廃棄を完了させてしまいましょう。
※1 2021年3月時点、当サイト調べによる。PCB廃油・処理物の1日あたり処理量が最も多い企業およびグループ
※2 2021年3月時点、当サイト調べによる。処理場ひと施設あたりのPCB廃油・処理物の1日あたり処理能力が最も高い