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シーリング材とは建物や容器の気密性や防水性を向上させるために、隙間を埋める目地材として使用されるものであり、コーキング材や充填剤、パテなどと呼ばれることもある製品です。
シーリング材は建築業界などで日常的に使用されており、製品によって様々な材料や原料が使われています。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は1972年に有害化学物質として指定され製造等が中止されましたが、それ以前に製造・販売された「ポリサルファイド系シーリング材」の原料としてPCBが使用されていたことが、2003年4月19日付の朝日新聞の夕刊記事として報道されました。
またその報道を受けて日本シーリング材工業会はリーフレットを発行し、PCB含有の可能性のあるポリサルファイド系シーリング材についての確認方法や取り扱い方法などを案内しています。
※参照元:日本シーリング材工業会「PCB含有ポリサルファイド系シーリング材の取扱いについて(2020年3月改訂)」【PDF】https://www.sealant.gr.jp/wp-content/uploads/pcb-owner2020.pdf
建築用のシーリング材にPCBが含有されていると公に広まったのは、2000年に兵庫県が県内公共施設を対象として実施した環境調査でした。
同調査は兵庫県内の公共82施設を対象に、ダイオキシン類の環境調査として実施され、結果として8施設でシーリング材からPCBが検出されるという状況が判明しました。
なお、兵庫県大気課はこの結果を受け、人体に対して直ちに問題や危険性はないとしつつ、PCBが気化されることなく含有されたままの状態である事実を国内へ情報提供したいという旨を発表しています。
※参照元:日本シーリング材工業会|PCBと建築用シーリング材-改訂版https://www.sealant.gr.jp/tec/pcb
PCBは1972年春に製造が中止されており、必然的にPCB含有の可能性のあるシーリング材は、同年夏頃までに販売されたポリサルファイド系シーリング材であると想定されています。なお、同時期の対象製品が必ずしもPCB含有物と限らない点も重要です。
半世紀以上前のことであり2024年現在において全ての実態調査を行うことは事実上不可能となっていますが、少なくとも1972年以前に製造・販売されたシーリング材であれば可能性はゼロでありません。ただし、当時のポリサルファイド系シーリング材は高価で使用物件や用途が限定的であり、一部の大型施設や公共施設などにおいてのみ使用され、その他の物件や自動車製造業界などでは使用されていなかったと考えられています。
※参照元:日本シーリング材工業会|PCBと建築用シーリング材-改訂版https://www.sealant.gr.jp/tec/pcb
PCB含有リスクのあるポリサルファイド系シーリング材は大部分が限定的かつ建物外部で使われており、人体に対する影響や危険性は基本的にないものとして考えられています。また兵庫県立健康環境科学研究センターの調査により、PCB含有シーリング材を使用されていた施設において、PCB濃度は1立方メートルあたり65~386ナノグラムとなっており、ドイツが策定した「3000ナノグラム以上は改善が必要」という基準を大きく下回っていました。
※参照元:日本シーリング材工業会|PCBと建築用シーリング材-改訂版https://www.sealant.gr.jp/tec/pcb
建築用に使われた1972年以前のポリサルファイド系シーリング材に関して、PCBが含まれていた場合、それが直ちに人体へ有害な影響を及ぼさないとしても、PCB含有の事実は無視できません。そのため可能性がある建築物やシーリング材に対して、適切な調査と確認を実施し、もしPCB含有物であると判明すれば改めて低濃度PCB廃棄物として処理することが求められます。
まず、1973年以降に製造されているシーリング材に関しては、PCB含有の恐れはないとされています。そのため、要確認の対象は主として以下のようになる点が重要です。
対象の施設において、シーリング材が使用されている複数の部位からそれぞれサンプルを採取します。なおシーリング材の使用記録などが残っている場合、それを参照して採取箇所を検討してください。
サンプル採取時は試料が散逸しないよう注意し、シーリング材はその都度、新しいカッターナイフなどで切除してサンプル袋へ保管します。
サンプル採取時には人体へPCBが接触するリスクを避けるため保護手袋や保護マスクを着用し、作業後は散逸物やゴミを回収します。またサンプリング残渣は汚染リスクを考慮して通常のゴミとは区別しましょう。
採取したシーリング材サンプルは「シーリング材種判定及びPCB含有分析の要否判定依頼書」を添付して、日本シーリング材工業会などの専門機関へ送付しPCB含有の有無について第一次判定を依頼します。
第一次判定でシーリング材にPCBが含有されていると判明した場合、改めてPCB含有量/PCB含有率を第二次判定によって確認することが必要です。
また、その上でPCB含有量が「0.5mg/kgを超える」と認められた場合、建物所有者や管理者はPCB濃度と対応する法制度にもとづいて適正な処理を行わなければなりません。
サンプル採取やPCB含有分析にかかる費用は、作業を依頼する機関や企業によって異なりますが、おおよその目安として日本シーリング材工業会の公式サイトで以下のような金額が紹介されています(2024年10月時点)。
なお実際の金額や依頼先や地域、作業環境、納期などによって異なるため、日本シーリング材工業会や日本シーリング工事業協同組合及び傘下組合会員などに対して事前に見積を依頼してください。
※参照元:日本シーリング材工業会|PCBと建築用シーリング材-改訂版https://www.sealant.gr.jp/tec/pcb
第一次判定と第二次判定でPCB含有が認められた場合、その濃度(含有量)に応じて処分を委託する先や取り扱いが異なります。
シーリング材1kgに対して、PCB含有量が100,000mg(10.0重量%)を超えている場合、高濃度PCB廃棄物として扱われます。
高濃度PCB廃棄物は保管場所によって令和3年3月31日または令和5年3月31日までの処理が法的に定められており、委託先にも中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)が指定されていることが重要です。
なお、2024年10月現在、高濃度PCB廃棄物の処理は全て完了していることが前提となっています。
PCB含有量が「0.5mg/kgを超える」ものに関しては、低濃度PCB廃棄物として扱い、環境大臣の認定を受けた無害化処理認定事業者、または都道府県及び政令市の長の許可を得た無害化処理事業者へ処分を委託しなければなりません。
処分期間は令和9年3月31日までとなっており、もしリスクがある物件や施設を所有・管理している者のうち、対象建築物の環境調査を行っていない場合は速やかに対処することが必要です。
なお、当サイトでは低濃度PCB廃棄物の処理に関して、認定・許可を受けた国内業者を紹介していますので、ぜひ以下のページも参考にしてください。
なんとなく近隣の産廃業者を選びがちですが、期限や予算組みを考えると、短期間で確実に処理を完了させられる可能性の高い事業者への依頼がおすすめです。
その指標として、処理能力の高い業者(グループ単位)上位3社(※1)をピックアップしました。低濃度PCB処理における「ビッグスリー企業」への依頼を視野に入れ、スムーズにPCBの廃棄を完了させてしまいましょう。
引⽤元:オオノ開發 https://www.ohno-as.jp/frep/
全国
※日本各地に支店あり
(東京、大阪、福岡、愛媛)
引⽤元:クレハ環境 https://www.kurekan.co.jp/treatment/iwaki.html
北海道、東北、関東、東海
引⽤元:エコシステム秋田 https://www.dowa-eco.co.jp/EAK/pub
公式サイトに記載無し
※1 2021年3月時点、当サイト調べによる。PCB廃油・処理物の1日あたり処理量が最も多い企業およびグループ
※2 2021年3月時点、当サイト調べによる。処理場ひと施設あたりのPCB廃油・処理物の1日あたり処理能力が最も高い