公開日: |更新日:
低濃度PCBの調査方法が知りたい方に向けて、調査手順を紹介します。また、低濃度PCBに該当しているかどうかの判断方法についてもまとめているため、処分が必要か判断する際の参考にしてください。
自家用電気工作物の高圧変圧器を調査する場合、電気機器の保守・点検を行なっている電気主任技術者や委託業者に依頼します。使用中のままの確認だと感電する危険性があるため、定期点検などの機会を設けて調査するようにしましょう。
電気主任技術者の選任または保守・点検の業務委託が義務付けられていない機器を調査する場合は、電気工事業者やメーカーなどに調査を依頼することになります。対象となる機器は、低圧受電する設備の分電盤内のコンデンサーや溶接機などに内蔵されたコンデンサーといった非自家用電気工作物です。
まずは、高圧受電設備の設備台帳に記載された電気機器と現物を照合しながら、記載漏れや誤記がないか確認します。確認する事項は機器名称や製造者名、型式、容量、製造年など。確認する際は、感電しないように必ず機器を停電してから実施するようにしてください。また、銘板の情報から高濃度PCB使用のものでないことも確認しましょう。
次に配電図をたどって、受電設備内の機器のほかに電力用コンデンサーやリアクトル、遮断機などが設置されていないかを確認します。台帳に記載されていないものがあれば、銘板情報を確認して、機器名称や製造者名、型式、容量、製造年を記載します。
まずは電力会社などとの契約が低圧電力、電灯契約などの形態かどうかを確認します。確認方法としては、検針票や電力料金表、受電設備としてキュービクルや電気室を設置していないことなどで判断することが可能。キュービクルなどがある場合は、高圧受電する施設となるため、内部の電気機器は自家用電気工作物にあたります。その場合は、自家用電気工作物の調査方法の手順に従ってください。
次に、施設内の設備に低圧コンデンサーが設置されていないかを確認します。低圧コンデンサーが設置されている場合は、銘板の情報からメーカー名や製造年、型式を確認して、記録しましょう。製造年が平成2年(1990)以前のものだった場合、メーカーにPCB汚染の有無を確認します。
PCB汚染の可能性があるものなら絶縁油を採取して、PCB濃度を測定。PCB濃度が0.5mg/kgを超えていれば低濃度PCBに該当するため、必要な届け出を行って適正に処分しましょう。
低濃度PCBに該当しているか判断するには、まず電気機器に取り付けられた銘板から製造年とメンテナンスの実施履歴などを確認しましょう。
これまでの測定例から、国内メーカーが平成2年(1990)頃までに製造したコンデンサーなどの絶縁油封じ切り機器の場合、PCB汚染の可能性が高いとされています。平成3年(1991)以降に製造されたものであればPCB汚染の可能性は低いとのことですが、ニチコン製のコンデンサーについては平成3年以降のものでもPCB汚染の報告事例あり。そのため、該当する機器は処分する前に濃度測定を行いましょう。
変圧器などの絶縁油交換が可能な機器の場合、製造年が平成5年(1993)以前のものは、PCB汚染の可能性があります。また、平成6年(1994)以降のものでも、絶縁油の入替・継ぎ足しといったメンテナンスが行われていればPCB汚染の可能性があるとのこと。
PCB汚染の可能性がある電気機器については、電気機器から絶縁油を採取してPCB濃度を測定し、低濃度PCBに該当しているかを判断します。低濃度PCBに該当するかの判断基準は、PCB濃度が0.5mg/kgを超えているかどうか。超えている場合は、届け出を行って適正に処分する必要があります。
昭和52年3月以前に建てられた建物の場合、PCBを使用した安定器が設置されている可能性があります。また、昭和32年1月~昭和47年8月までに国内で製造された蛍光灯器具・水銀灯器具・低圧ナトリウム灯器具の安定器についても、PCBが使用されたものが存在します。ただし、どちらのケースにおいても、一般家庭用の蛍光灯などの安定器にPCBが使用されたものはありません。
安定器にPCBが使用されているかどうかは、安定器の銘板に記載されたメーカー・型式・種別・性能(力率)・製造年月日などの情報から判別できます。詳細については各メーカーに問い合わせるか、一般社団法人 日本照明工業会のHPをご確認ください。
メーカーが不明または廃業していて問い合わせができない場合は、力率と製造年月からPCBの有無を判断します。そもそも銘板が読み取れない場合については、PCB含有製品として扱ってください。
安定器の調査は感電の危険性があるため、できるだけ電気工事業者や専門の調査会社などに依頼するようにしましょう。また、高いところに設置されている照明器具の調査については、安全に十分留意するために2人以上での作業が推奨されています。
製造から40年以上経過して劣化した安定器が破裂し、含有しているPCBが漏れ出る事故が発生しています。毒性のあるPCBが人体にかかった場合、吹き出物や色素沈着、全身倦怠感、しびれ感、食欲不振などの健康被害を引き起こす危険性があります。
そのため、昭和52年3月までに建築・改修した建物については、古い安定器を使用していないか即時確認が必要です。サンプル調査だとPCBを使用した安定器を見逃して事故につながったケースもあるため、全数調査を行うようにしましょう。PCBを使用した安定器が見つかった場合は回収し、別の安定器に交換してください。
期限内の処分が進められているPCBですが、調査委託機関をかたった詐欺が発生しています。
国や都道府県では保有状況の調査を実施していますが、所有者が依頼してもいないのに電気設備や照明器具を調査し、「調査のための作業費用を請求する」「断れば罰則を受けることになる」などと語ることはありません。委託した調査機関の訪問時に金銭を要求することはないため、依頼してもいないのに費用を請求された場合は詐欺を疑い、最寄りの警察署や交番などに相談しましょう。ただし、所有者自らが電気工事業者などに調査を依頼している場合は費用が発生します。
また、国や都道府県の職員が所有者の元を訪問する際は、必ず身分証を携帯しています。詐欺被害を防ぐため、身分証の確認をするのがおすすめです。
なんとなく近隣の産廃業者を選びがちですが、期限や予算組みを考えると、短期間で確実に処理を完了させられる可能性の高い事業者への依頼がおすすめです。
その指標として、処理能力の高い業者(グループ単位)上位3社(※1)をピックアップしました。低濃度PCB処理における「ビッグスリー企業」への依頼を視野に入れ、スムーズにPCBの廃棄を完了させてしまいましょう。
※1 2021年3月時点、当サイト調べによる。PCB廃油・処理物の1日あたり処理量が最も多い企業およびグループ
※2 2021年3月時点、当サイト調べによる。処理場ひと施設あたりのPCB廃油・処理物の1日あたり処理能力が最も高い