公開日: |更新日:
PCB処理は安全に配慮して適切に行わないと、事故につながる恐れがあります。ここでは、実際に起きたPCB処理における事故の事例を紹介。事故につながった原因や対策などをまとめているため、参考にしてください。
低濃度PCB含有の絶縁油を無害化・リサイクルするために設置した処理施設での火災事故の事例です。
火災事故が発生したのは、第1段絶縁油反応器底部の排出弁と反応器本体との結合フランジ部分。出火原因は高温に加熱された絶縁油が反応器から漏れ出し、空気と接したことで発火したものと判断されています。
絶縁油が漏れ出た原因は、排出弁フランジ部に使われていたガスケットがボロボロに劣化しており、残存幅の3分の1にまで減損していたためです。メーカーによると、施設の使用環境がガスケットの仕様に適合していなかったことが主な原因とのこと。
施設自体は各装置の温度管理や監視体制、消火設備などの安全性に十分配慮されており、大事に至らなかったのも監視体制と消火設備が機能していたためです。けれど、使用環境に合わない仕様の部品を使ってしまうという基本的なミスにより、思わぬ火災事故を引き起こしてしまいました。
※参照元:消防防災博物館「消防専門知識の提供」https://www.bousaihaku.com/foffer/7324/
PCB廃棄物処理施設にて圧力計が脱落し、約200LものPCB濃縮洗浄油が漏洩。さらに、PCB濃縮洗浄油から揮発したPCB含有蒸気の一部が未処理のまま外部に排出された事例です。事実確認や調査などをもとに推定された事故原因は、以下の通りになります。
事故発生後すぐに周辺環境調査の手配が行われ、翌日以降に施設周辺の大気・水質・底質および土壌中のPCB濃度等を測定したところ、PCBは検出されませんでした。また、PCBの成分として含まれるコプラナPCB由来のダイオキシン類も環境基準を下回っていることから、健康への影響の恐れはないと考えられています。
今回の圧力計の脱力、PCB含有蒸気の漏洩に対する主な対策は以下の通りです。
【圧力計の脱落】
【PCB蒸気の漏洩】
そのほかにも安全総点検や非定常操作のマニュアルの再作成、緊急時の連絡方法の見直し・訓練の実施などがあげられています。
※参照元:JESCO「豊田PCB廃棄物処理施設において生じたPCB漏洩事故について(中間報告)」[PDF]https://www.jesconet.co.jp/content/900005694.pdf
平成18年3月28日及び同年5月25~26日に、東京都江東区青梅にある東京PCB廃棄物処理施設において発生した、PCB含有廃水とPCB含有ガスの流出事故に関する事例です。
PCB処理が完了していない廃水を、施設内で一時貯留するために設置されていたタンクがオーバーフローを起こした結果、タンクからあふれたPCB処理未了廃水がタンク周辺の芝生に浸透して土壌汚染などを引き起こしました。
このため同施設では緊急的対応として処理施設の稼働を一時停止させ、またPCB汚染が発生したと想定される芝生へシート養生を行い、周辺に残存していたPCB汚染水の回収などを行いました。また、その後に微量PCBを含んだ排気ガスが施設から排出されていたという事故も発覚しています。
施設ではその後の調査として土壌調査や性能確認試験などが実施され、PCBによる汚染レベルの分析や施設の安全な再稼働に向けた対応能力審査も行われた上で、施設の運転再開が承認されています。
※参照元:【PDF】PCB処理未了廃水の流出と緊急対策の実施について(平成18年3月28日 日本環境安全事業株式会社)https://www.jesconet.co.jp/content/900005331.pdf
※参照元:JESCO|東京PCB廃棄物処理施設における事故関係https://www.jesconet.co.jp/facility/tokyo/topics2.html
PCB保管事業者の構内において、ドラム缶で保管されていたコンデンサ(PCB汚染物)を収集運搬車両のユニックを使って吊り上げようとしたところ、コンデンサが破損して内部のPCBが漏出した事例です。
不幸中の幸いとして漏出PCBは保管容器であったドラム缶内にとどまり、周辺への環境汚染は発生しませんでしたが、吊り上げ作業中にPCB漏出が発生した事故事例として収集運搬事業者に周知されました。なお、安全対策として収集運搬作業に伴うチェック体制や管理体制の強化とともに、防水シートの設置など具体的な環境汚染対策の徹底が求められています。
※参照元:【PDF】PCB 廃棄物収集運搬時におけるヒヤリ・ハット事例集 https://www.city.toyota.aichi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/209/sanko_shiryo4.pdf
保管事業者の作業所構内において、PCB汚染物の保管容器を開いた際に、汚染物から漏出したPCBが保管容器の底部に溜まっていた事例です。保管容器の外部へPCBが漏出することはありませんでしたが、保管容器を作業員が開いて独特の異臭を感じたことから問題が発覚しました。
PCB汚染物の破損や経年劣化などによるPCB漏出リスクは常にあり、保管事業者が定期的にPCB保管容器などの状況をチェックしていない場合、知らない間にPCB事故のリスクが高まってしまいます。
※参照元:【PDF】PCB 廃棄物収集運搬時におけるヒヤリ・ハット事例集 https://www.city.toyota.aichi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/209/sanko_shiryo4.pdf
PCB保管事業者がPCB廃棄物の状況確認を行っていた際、作業の邪魔になっていたペール缶を動かそうとしたところ、容器の蓋がきちんと閉まっていなかったために内部の液体がこぼれそうになったヒヤリハット事例です。
改めて担当者へ確認したところ液体の正体はPCB油であったことが判明し、もしペール缶が完全に倒れたり内部の液体があふれたりしていれば、周辺にPCB油が流出・飛散して環境汚染に発展していたかも知れません。
※参照元:【PDF】PCB 廃棄物収集運搬時におけるヒヤリ・ハット事例集 https://www.city.toyota.aichi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/209/sanko_shiryo4.pdf
PCB汚染物であるコンデンサの運搬時に発生したヒヤリハット事例です。なお、事前の確認によってPCB漏えいは確認されていませんでした。
事例発生は収集運搬日のことであり、保管事業者が運搬の準備作業を行うために樹脂で固定されていたコンデンサの塩ビ管を外したところ、衝撃で電線を支えていた碍子が破損してしまいました。なお、その後の運搬作業は破損部を補修材でカバーした後に日を改めて実施されています。
補修剤による補修の仕方はガイドラインで定められており、遵守しなければなりません。
※参照元:【PDF】PCB 廃棄物収集運搬時におけるヒヤリ・ハット事例集 https://www.city.toyota.aichi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/209/sanko_shiryo4.pdf
保管事業者の構内にあったPCB汚染物保管容器をユニックで吊り上げて、インナートレイへ積み込もうとした際、地切りの際にブーム位置と吊り荷がずれて玉掛け者の側へ荷が振れるという事態が発生しました。幸運にも退避スペースが確保されていたため、作業員に荷が衝突するという事故は発生しませんでしたが、荷の重さは72kgもあり、もし作業員へぶつかっていれば深刻な労働災害や死亡事故が発生していた恐れもあるでしょう。
※参照元:【PDF】PCB 廃棄物収集運搬時におけるヒヤリ・ハット事例集 https://www.city.toyota.aichi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/209/sanko_shiryo4.pdf
保管事業者の保管場所で固定されていたPCB汚染物(コンデンサ)を移動させようと、コンデンサを固定していたビスなどの取り外しを行った際、作業員が誤って工具を落として機器にぶつかりそうになるというヒヤリハット事例です。
長年の保管によって保管容器やコンデンサなどに経年劣化や腐食が進行している恐れもあり、もし落下した工具がぶつかった衝撃で容器やコンデンサが破損すれば、そこからPCBが漏出して環境汚染事故につながる恐れもあるでしょう。
※参照元:【PDF】PCB 廃棄物収集運搬時におけるヒヤリ・ハット事例集 https://www.city.toyota.aichi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/209/sanko_shiryo4.pdf
なんとなく近隣の産廃業者を選びがちですが、期限や予算組みを考えると、短期間で確実に処理を完了させられる可能性の高い事業者への依頼がおすすめです。
その指標として、処理能力の高い業者(グループ単位)上位3社(※1)をピックアップしました。低濃度PCB処理における「ビッグスリー企業」への依頼を視野に入れ、スムーズにPCBの廃棄を完了させてしまいましょう。
※1 2021年3月時点、当サイト調べによる。PCB廃油・処理物の1日あたり処理量が最も多い企業およびグループ
※2 2021年3月時点、当サイト調べによる。処理場ひと施設あたりのPCB廃油・処理物の1日あたり処理能力が最も高い