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PCB廃棄物の適正な処理を進めるため、環境省では支援制度を設けています。PCB廃棄物処理基金もそのひとつであり、処理を行う事業者を補助する体制を整えています。そこで、PCB廃棄物処理基金が設立された背景や仕組み、実施状況を解説します。
PCB廃棄物処理等に係る支援制度では、「中小企業者等の軽減制度」や「LED照明導入促進事業」があります。なかでも中小企業者等の軽減制度に用いられる補助金は「PCB廃棄物処理基金」や国からの国庫補助金から捻出されています。
PCB廃棄物の早期適正処理のために設けられた「PCB廃棄物処理基金」の背景には、「PCBの毒性」と「大量の微量PCB汚染機器の存在」「処理の遅れ」があります。
そもそもPCBは絶縁性や不燃性といった特性から、トランスやコンデンサなどの電気機器で広く活用されていました。しかし、1968年にカネミ油症事件が発生。PCBが混入した米ぬか油による食中毒により、PCBの毒性が判明したのです。
事件を受け、1972年以降はPCBを含む製品の製造は行われていません。そこで既に製造されたPCBを処理するため、民間主導のもと処理設備の設置が進められました。しかし近隣住民などの理解を得られなかったため、およそ30年間に渡りほとんど処理が行われていなかったのです。
保管されたPCB廃棄物を適正処理するべく、国は2001年にPCB特措法を施行します。国が中心となり、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)を活用した処理が進められました。
PCB特措法では「2016年7月まで」の処理完了を目標としていました。しかし微量PCB汚染機器が大量に発見されたことや想定よりも処理が遅れていたことから、処理期限を延長。2027年3月末日までの処理を目指すこととなりました。
なお、PCB廃棄物処理基金はPCB特措法が施行された2001年に設置されています。PCB廃棄物の処理にはコストがかかりますから、「補助金を交付して早期かつ適正に処理を完了させよう」となったのです。
PCB廃棄物処理基金は、国や都道府県からの補助金のほか、産業界等の民間からの出えん金によって造成されています。
基金の交付対象は環境大臣が指定した処理事業者です。処理事業者を支援することで、PCB廃棄物の処理費用の軽減やPCB廃棄物処理の研究の促進、代執行における処分等措置に要する費用の軽減などを目的としています。
PCB廃棄物処理基金は、中小企業等のPCB保管事業者に直接交付されるものではありません。しかし、「中小企業者等の軽減制度」を利用することで補助金と基金助成金相当額の金額が軽減される仕組みです。
年度 | 件数 | 金額(千円) |
---|---|---|
平成17年度 | 81 | 36,644 |
平成18年度 | 100 | 46,169 |
平成19年度 | 866 | 291,201 |
平成20年度 | 3,005 | 701,048 |
平成21年度 | 2,786 | 1,159,560 |
平成22年度 | 3,065 | 1,464,243 |
平成23年度 | 3,840 | 1,716,218 |
平成24年度 | 4,855 | 2,446,511 |
平成25年度 | 4,290 | 2,292,298 |
平成26年度 | 3,993 | 2,143,764 |
平成27年度 | 3,680 | 2,139,889 |
平成28年度 | 3,485 | 1,918,167 |
平成29年度 | 3,840 | 1,929,510 |
平成30年度 | 3,799 | 2,065,229 |
令和元年度 | 3,676 | 1,938,777 |
令和2年度 | 4,365 | 2,871,865 |
令和3年度 | 8,576 | 6,650,248 |
情報参照元:独立行政法人環境再生保全機構「実施状況の推移」
平成20年度から令和2年度までは件数や金額に大きな変動はなかったものの、令和3年度には件数・金額ともにアップしています。令和4年1月1日から令和4年3月31日までの期間では、処分に要する費用に対する助成として922,521,761円、収集運搬費用及び漏えい防止費用に対する助成として206,287,097円を交付していました。
年度 | 件数 | 金額(千円) |
---|---|---|
平成30年度 | 14 | 56,596 |
令和元年度 | 7 | 3,529 |
令和3年度 | 17 | 105,368 |
情報参照元:独立行政法人環境再生保全機構「実施状況の推移」
代執行支援事業とは、指定事業者が実施する「処分等措置に要する費用として都道府県等が負担するものを支援する事業」です。令和4年1月1日~令和4年3月31日までの期間では、都道府県等 7件・代執行処理台数 11台・代執行処理重量310.2kgに対し合計5,746,875円の交付を行いました。
PCB廃棄物の処理では、多額のコストがかかることがあります。しかしPCB特措法では処理期限までの適正な処理を義務付けていますので、処理を行わなければなりません。PCB廃棄物処理基金や制度を上手く活用し、処理にかかるコストを軽減させましょう。
なんとなく近隣の産廃業者を選びがちですが、期限や予算組みを考えると、短期間で確実に処理を完了させられる可能性の高い事業者への依頼がおすすめです。
その指標として、処理能力の高い業者(グループ単位)上位3社(※1)をピックアップしました。低濃度PCB処理における「ビッグスリー企業」への依頼を視野に入れ、スムーズにPCBの廃棄を完了させてしまいましょう。
引⽤元:オオノ開發 https://www.ohno-as.jp/frep/
全国
※日本各地に支店あり
(東京、大阪、福岡、愛媛)
引⽤元:クレハ環境 https://www.kurekan.co.jp/treatment/iwaki.html
北海道、東北、関東、東海
引⽤元:エコシステム秋田 https://www.dowa-eco.co.jp/EAK/pub
公式サイトに記載無し
※1 2021年3月時点、当サイト調べによる。PCB廃油・処理物の1日あたり処理量が最も多い企業およびグループ
※2 2021年3月時点、当サイト調べによる。処理場ひと施設あたりのPCB廃油・処理物の1日あたり処理能力が最も高い